消えた383億円 “グッドウィルの亡霊”テクノプロ上場に暗い影落とす、闇の買収劇

2015/02/06
消えた383億円 “グッドウィルの亡霊”テクノプロ上場に暗い影落とす、闇の買収劇

ビジネスジャーナル 文=編集部.

 技術者派遣・請負事業を行うグループ会社を統括、運営するテクノプロ・ホールディングス(HD)が、昨年12月15日、東京証券取引所の市場一部に新規株式公開(IPO)した。初値は1852円で、公開価格(1950円)を5%下回った。その後の高値は12月17日の2032円で、公開価格をようやく上回った。安値は上場初日の1799円である。

 公募増資による新株発行は行わず、株式の99.9%を保有する筆頭株主の投資ファンド系企業であるジャパン・ユニバーサル・リクルートメントが保有株2725万5000株(発行済み株式数の80%)を売り出した。

 株式市場は、公開価格割れを冷静に受け止めていた。「旧グッドウィル・グループの再上場案件といういわくつきの銘柄だったので前評判は盛り上がらず、初値は公開価格割れになるのでは、と予想されていた」(外資系証券会社アナリスト)

 今年に入って1月6日、日経平均株価は一時、526.98円安と急落したが、テクノプロHDの株価は1956円まで下げ、終値は1960円。7日は1945円で公開価格を下回ってしまった。

 テクノプロHDの前身は、アイルランドの投資会社が2006年7月に設立したジャパン・ユニバーサル・ホールディングス・アルファ。12年4月、商号をテクノプロHDに変更した上で、旧グッドウィル・グループの後継会社、プロンプトHD(かつてのラディアHD)から傘下の事業を買収した。

 テクノプロHDは、東京・港区六本木の六本木ヒルズ森タワーに本社を置く。傘下に約1万人のエンジニア、研究者を擁する国内最大の技術人材サービス企業のテクノプロ、建設系技術者の派遣会社であるエヌ・アンド・シーなどがある。株式公開をにらみ、テクノプロは昨年7月、シーテック、テクノプロ・エンジニアリング、CSI、ハイテックの4社が統合して設立された。取引業界は輸送用機器が38.9%、産業用機械が19.6%、電子部品が11.1%、情報産業が9.4%などとなっている。

 同社の西尾保示(やすじ)社長は名古屋大学法学部を卒業後、日本長期信用銀行に入行。ロンドン支店長などを歴任したが、長銀が経営破綻した後は、山佐、セコムメディカルリソース、昭和地所、国際興業と転職を重ね、08年に旧グッドウィル・グループの取締役に就任した。テクノプロHDの新体制のもとで常務取締役兼財務経理本部長を務め、13年7月に社長兼CEO(最高経営責任者)兼CFO(最高財務責任者)に就いた。

 筆頭株主のアイルランドの投資会社は保有株式を順次売却して、投資分を回収して撤退する。「旧グッドウィル・グループの亡霊が甦った」と騒がれた今回の上場だが、テクノプロHDは独立系技術者派遣会社に生まれ変わるようだ。

●国際会計基準(IFRS)を採用したワケ


 テクノプロHDは国際会計基準(IFRS)を採用している。新規上場企業でこのIFRSを採用するのは、すかいらーくに次いで2社目だ。

 15年6月期の連結決算の売上収益(IFRSでは売上高とはいわず売上収益)は前期比7%増の796億円、営業利益は23%増の70億円、当期利益は57%増の63億円、1株当たり配当金は93.19円を見込む。

 IFRSを採用したのは、買収に伴う「のれん」代の292億円(14年9月末)を当面、償却しないで済むからだ。日本の会計基準では「のれん」代は20年以内に均等に償却しなければならず、営業減益の要因になる。それを避けるために国際会計基準を採用したということだろう。

 12月に新規に上場した銘柄の中で、テクノプロHDは静かな発進となった。膨大な「のれん」代を抱えるすかいらーくも上場以来、上値が重い展開を続けている。テクノプロHDの株価は今後どうなるのだろうか。

●思い起こされる、創業者・折口雅博氏の栄華と買収劇

 グッドウィル・グループの創業者である折口雅博氏は、規制緩和の追い風に乗って人材派遣と介護ビジネスで旋風を巻き起こした。「六本木ヒルズ族」の兄貴分といわれた彼の金満生活は有名だった。田園調布に豪邸を構え、自家用飛行機を持ち、高級外車を何台も乗り回し、女性関係も派手な発展家といえる。

 ビジネスでは、日雇いや軽作業派遣を中心とした人材派遣の「グッドウィル」(09年解散)、訪問介護などの介護ビジネスを担っていた「コムスン」(09年解散)、人材派遣最大手の「クリスタル」(後のラディアホールディングス・プレミア、10年特別清算)の3社を中心とする企業グループを形成していた。

 しかし、コムスンの介護報酬不正請求やグッドウィルの違法派遣などの不祥事をきっかけに両社は廃業した。結局、グッドウィル・グループは解体され、折口氏は09年に破産宣告を受けた。

 折口氏が事件史に名を刻むことになったのは、06年10月の人材派遣の最大手クリスタルグループの買収だろう。クリスタルの売上高はグッドウィルの3倍。「小が大を呑む」典型で、“下克上買収”と騒がれた。

 折口氏は、クリスタルを手に入れるために奇策を用意、2つの投資ファンドを介する複雑な手法を使った。これが、闇の紳士たちの跋扈を招くことになる。

 クリスタル株を買収するコリンシアンファンドに、グッドウィルのダミーの人材サービスファンドが出資。買収後、コリンシアンファンドから脱退した人材サービスファンドは、出資分に見合うクリスタル株式の分配を受けた。こうした便法で、グッドウィルは883億円でクリスタル株式を手に入れたのだ。

 クリスタルのオーナーは、同業他社に売却しないことを絶対的な条件としていたため、真の買収者がグッドウィルとわかって激怒した。

 コリンシアンファンドには「外部投資家」が出資しており、出資分を差し引いて383億円の利益を得た。巷では「外部投資家」が誰かを究明しようとの動きが活発化して騒然となり、グッドウィルのトリッキーな買収劇に東京国税局が切り込んだ。この頃から、消えた383億円の金の流れが漏れてくるようになり、国税はコリンシアンファンドの社長らを、クリスタル買収の仲介で得た金を過少申告していたとして脱税容疑で摘発。しかし、どこにその金が流れたのかはわかっていない。

 まさに、M&Aの闇の世界が垣間見えた事件だったといえる。そして、悪名を残したまま、折口氏は経済界の表舞台から消えた。
(文=編集部)
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