人手不足 進化する職場 崩れる賃金の常識

2017/05/02
人手不足 進化する職場(中)崩れる賃金の常識

若手・非正規に手厚く


2017/5/2付
日経新聞

人手不足が深刻になる中、専門性の高い派遣社員やフリーランスの賃金が上昇している。

正規に固執せず 

大手IT(情報技術)会社で金融機関向けのシステム開発を担当した50代の男性エンジニアは昨春退職し、派遣会社に登録した。年収は約1000万円。転職前の水準を上回った。「仕事を選べる派遣社員に魅力を感じた」と語る。
 IT人材の派遣会社、パーソルテクノロジースタッフ(東京・新宿)社長の瀬野尾裕(43)は「現場の価値観が変わってきた」と話す。専門性が高ければ、派遣社員も正社員と遜色ない収入を得られるようになってきた。

 求人サービス大手のインテリジェンスによると、IT技術者の中途採用求人倍率は3月に8.08倍。3年前(5.66倍)と比べても上昇が目立つ。ITコンサルタントやデータサイエンティストといった専門性の高い職種の引き合いが強い。

 派遣社員はいつでも望む仕事があるとは限らない。しかし、労働市場の逼迫で不安定さに対する心配は薄れた。成果さえ出せば、十分な賃金を得られる時代だ。正社員が全てではない。

 人手不足が深刻な建設業界。2020年の東京五輪開催などを控えて、大手建設会社で現場を支える若手社員の負担は大幅に増している。ゼネコン各社の労働組合加盟団体が転職を検討する理由を聞いたところ、休みを取れないとの回答が最も多かった。

 大成建設は30代前半までの若手社員に限定したベースアップ(ベア)の実施を決めた。平均賃上げ率は6.7%。労働組合も6月までに受け入れる方針だ。初任給も引き上げる。人事部長の小沢正宏(57)は「現場で苦労している若手に厚く報いたい」と話す。
 清水建設、鹿島、竹中工務店も今年の春季労使交渉で、入社年次や社歴によらない一律のベアで妥結した。清水建設のベアは1万円。昇給率は若手がより高くなる仕組みだ。新卒採用難と若手社員のつなぎとめの難しさが年功序列を突き崩す。

中小がベア逆転

 人材難がさらに深刻な中小企業でも異変が起きている。
 機械・金属関連メーカーの労働組合が加盟する、ものづくり産業労働組合(JAM)の春季労使交渉では、中間集計で従業員300人未満の中小企業のベアの平均回答額が1397円とトヨタ自動車などを上回った。
 厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、社員規模別にみた賃金上昇率は16年度に入り、社員5~29人の中小企業が500人以上の大企業をおおむね上回って推移。2月の中小企業の賃金上昇率は0.8%と、大企業に比べて0.7ポイント高い。
 優秀な人材の獲得競争は一段と激しさを増している。賃金に関する常識は過去のものとなりつつある。
=敬称略

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